舩橋クリニック|和歌山市岩橋の心臓血管外科・内科・放射線科

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むくみについて

「足が浮いて靴下の跡が残るんやけど大丈夫やろか?」
と相談を受けることがあります。下腿浮腫と呼ばれるものですが、原因はざっと20以上にも及びます。その中でも今回は日々の診療でよく目にするものを紹介したいと思います。

浮腫を一言で表現するならば「血管内から血管外への水の移動」ですが、水が移動する原因は以下の3つのカテゴリーに分けることができます。

①血管内の圧が上昇 
②血管壁の透過性が亢進 
③血管内の浸透圧が低下


には心不全・腎不全・静脈還流不全・静脈血栓症・平滑筋収縮不全などが挙げられます。これらは胸部レントゲン・採血・下肢エコーで鑑別しますが、当院外来においては心不全や静脈還流不全が大多数を占めます。
心不全の場合は呼吸苦や倦怠感を認めることが多く、心機能に応じて治療選択を行います。静脈還流不全の場合は下肢エコーで診断したのち圧迫療法や手術療法(静脈瘤があれば)を選択します。
血栓症はとにかく痛みます。静脈が走行している部分を親指で押して痛むときは高確率で血栓を認めます。「急な発症痛みを伴う浮腫」は血栓症であることが多いので早めに受診するようにしてください。
意外と多いのは高齢者・糖尿病・パーキンソン病に見られる平滑筋収縮不全による浮腫です。毛細血管への流量を調整する細動脈が収縮できず血流量が増えるため浮腫みます。平滑筋収縮阻害薬を使用して血圧を下げている患者さんの足が浮腫むのも同じ理由です。緊急を要することは少なく、日常生活に差し支えなければ経過観察することが多いです。

には蜂窩織炎や血管性浮腫が挙げられます
蜂窩織炎は片側の下肢痛・熱感を伴うこと多く、高齢になるにつれて発症率は増加します。これは足白癬(いわゆる水虫)や皮膚乾燥による皮膚バリア破綻部位からの細菌侵入が原因です。治療は早期の抗生剤投与が必須ですので痛み、熱感がある場合は早めに受診してください。血管性浮腫は除外診断で診断することがありますが、好酸球性血管性浮腫は予後良好で多くの場合自然治癒します。

には低栄養、非代償性肝硬変、ネフローゼ症候群が挙げられます。①②と比較して浮腫への影響は少ないですが、血液中のアルブミンが2.0g/dl以下まで低下すると浮腫が出現します。当院の外来診療ではあまり遭遇することはありませんが、急な発症で蛋白尿があればネフローゼ症候群と診断し様々な疾患を鑑別する必要がありますので、急いで腎臓専門病院に紹介します。

いかがでしょうか、ここまで読まれて甲状腺機能の影響は①~③のどれに属するの?と突っ込まれる方は浮腫エキスパートです。ちなみにどれにも属しませんが説明が複雑になるのでここでは端折ります。

要約すると、「痛み・熱感・急な発症・呼吸苦を伴う下腿浮腫は受診を急ぎましょう。」となるのでしょうか。

書籍1冊を用いて論じられるべき「浮腫」について、強引に約1000字でまとめてみました。今回は以上になります。